フレデリック・ワイズマン『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』
ワイズマン特集@シネマヴェーラ渋谷での2本目です。
今回の特集上映はもう終わってしまいましたが…
『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』
今回の特集上映の中では最新作で、アメリカではなくイギリスの国立美術館を撮影したものです。
ですが、ワイズマンなので、この美術館がどこにいつからあってどのように歩んで来たか、などを説明する場面、ナレーション、字幕などは当然ながらありません。
だから私たちは、なんの予備知識もなくいきなり美術館の中にいます。
そこで目にするのは展示された絵画、ギャラリートークやワークショップ、ピアノコンサートやダンスなどの催し物などに加えて、普段は観ることができない経営にかかわる会議の様子や絵画の修復作業などなど…
映画としてどうなのかというのは、もう一度観ないと私にはわからないです。
眠りはしなかったのですが、なんとなく物足りないような…
ただ明らかなのは、名作がたくさんある世界最高峰の美術館でワイズマンが映し出そうとしているのは、美術品そのものだけではない、ということでしょう。
そういうのは女優さんをナビゲーターにした「美術館探訪」みたいなテレビ番組にもできることです。
そういう意味では、美術品について詳しく知りたいとかを期待して観ると物足りないかもしれません。
でも私が物足りなかったのはそういう理由ではなく、私自身が”思いがけないなにか”をそこに観ることができなかった、というだけのことのような気がします。
映像を見る目が不十分なので。
ワイズマンが作品を通して行ってきていることは、おおざっぱに言えば、”そこ(具体的な場所あるいは具体的にしろ抽象的にしろある状況)における人々の行い”であって、この作品でもその部分は変わりないとは思いました。
全く個人的な話ですが、ここに出てくるミケランジェロやホルバインといった画家の絵は、今の自分には情報量が多過ぎて疲れてしまうなあ、という発見がありました。それはそうだろうと思うのは、描いた人は相当な時間とエネルギーをそこに費やしているわけですから、観るほうだってそれを受け止めるためにはそれなりの力が必要なわけです。
西洋の絵画は宗教的であればあるほど情報量が多い気がします。禅画などとは対照的です。
絵画を観るのには体力が要りますね。
ワイズマンはナショナル・ギャラリーを撮りたいと思い、30年越しでようやく撮ることができたそうです。
映画を観るのにも体力が要ります。