WILD SIDE CLUB - 映画について -

新作・旧作を問わず映画について書いています。長い映画大好き。まれにアートや演劇についても。

日本のアクションはすごいことになっていた 『ベイビーわるきゅーれ』

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2021年製作/95分/PG12/日本
配給:渋谷プロダクション
監督・脚本:阪元裕吾
アクション監督:園村健介
エグゼクティブプロデューサー:鈴木祐介
出演:高石あかり、伊澤彩織、三元雅芸、秋谷百音、うえきやサトシ、福島雪菜、本宮泰風

 

https://babywalkure.com/

 

仕事としての殺しを淡々とこなす女子高生の殺し屋、杉本ちさと(高石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)が、高校を卒業して殺し屋の寮?から自立しなければならず、共同生活を始める。ひょんなことから私怨がらみの殺しをやらざるを得なくなり、最終的に大暴れ、というストーリー。なんで女子高生が殺し屋? とかはわからないけれども、それは別にどうでもいい。部屋ではダラダラしている今時の若い女の子がプロの殺し屋だというギャップを楽しめばいいだけだ。

阪元裕吾監督について、公式サイトに「大学在学中に圧倒的な暴力描写で自主映画界を席巻」とある通り、何と言ってもアクションシーンがすごい。

 

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先日noteに書いた韓国ドラマ『マイネーム:偽りと復讐』の記事に「こういうハードボイルドな“女の子”を演じられる俳優が、日本にはいない気がします」などと書いてしまったが、こんなところにいた。伊澤彩織さん。すごいです。

 

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日本映画もドラマもろくに観てこなかったから、アクションがこんなに進化しているなんて知らなかったし、伊澤彩織さんの存在も知らなかった。

本作のラストはヤクザ(とヤクザから依頼された?男たち)が大勢いるところに二人がカチコミしてバトルが展開されるシーンだ。昔のアクションだったら、こういう場合、主人公がバーっと行くところへ向かってくる敵を「せーの」で合わせたように右に左に倒して行くような感じだった。つまり、観客からもダンスの振り付けのように見えてしまうような、体の動きとしては一般人にはできないかもしれないけど、暴力の切実さみたいなものが抜け落ちているようなシーンになっていた。

本作を観て、日本の映像作品におけるアクション・暴力シーンの印象がアップデートされた。素人には把握できない動き。そう来てこう来てこうでしょ、という決まりごとがほとんど見えない。スピード感もすごいし、それを自然に見せるカメラワークもすごい。園村健介アクション監督は、2002年から多くの映画、ドラマ、ゲームでアクション監督をされて来たようだ。またスタントとして出演もしている。だから日本のアクションシーンはとっくにすごいことになっていたのかもしれない。

時々セリフが聞き取りにくいところがあったり(これは自分の耳の衰えのせいかもしれない)、明るいちさとが騒がしすぎると感じるところもあったが(これも自分の衰えのせいかも)、二人のキャラクターと関係性はよかったし、何よりアクションが良くて、それだけでも観てよかった。

 


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伊澤彩織さん主演でシリアスなアクションものという作品も、今後出てくるのではないだろうか。期待したい。