WILD SIDE CLUB - 映画について -

新作・旧作を問わず映画について書いています。長い映画大好き。まれにアートや演劇についても。

フレデリック・ワイズマン『BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界』

今年のシネマヴェーラでの特集上映で観た4本目は、『BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界』です。

 

www.cinemavera.com

 

 

  

BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界 Ballet(DVD)

 

原題:BALLET

公開年:1993年

170min、カラー、DVD

 

 

アメリカン・バレエ・シアターの活動を記録した作品で、レッスン風景、バレエ団の運営に関する活動、公演の様子が写し出されています。

しかし単に「記録映画」とは言えないだろうと思うのは、本作品においても他の作品同様、場所や日付、人物の名前や演目名などは一切呈示されないからです。

 

ダンスは大好きなのですが、バレエには全くなじみがないので、バレエの作品を見てもあまりピンときません。有名な演目だったり、有名なダンサーや指導者がいたかもしれませんが、それにも気づきません。

そんな私なので、バレエ自体の素晴らしさとかについてはよくわからないので、鍛え上げられた肉体とそれをコントロールする力、作品に対する真摯な態度などを観ることができた、と、何も言っていないような感想しか言えずなんとも情けない…

 

しかし、バレエ団といえばつい山岸凉子さんの『アラベスク』をイメージしてしまいますが、本作品を観て、実在のバレエ団とは実に淡々としたものだなあと思いましたね。一流だからこそ淡々としているのかもしれません。

 

 

場所はニューヨークだし、トップのダンサーたちが集まっているので、もっとなんというかピリピリしたものがあるかと想像していました。が、そこはやはりバレエ、一般のショービジネスの世界とは違うのでしょう。

ここでは指導者/振付家は作品制作に関して絶対であるということはわかりました。

振り付けに関して、「ここはこうして」という指導者/振付家の言葉は絶対であり、それに対して身体で応えていくのがダンサー。ダンサーのほうから「いや、これはこうしたほうがいいと思う」というようなことはない、ということ。

 

本作品では、団員の個別的な実像、みたいなものはあまり見えて来ません。単に私の見る力がないだけかもしれませんが、少なくとも私には見えて来ませんでした。それはたぶん、彼らが話す場面が少なかったからかもしれないと思います。

バレエ好きの人が観たら多くの発見がある作品なのかもしれません。彼らの動きを観るだけで、わかることがたくさんあるのかも。

やはり身体表現というのは難しいものだと思います。

表現するのに日々の鍛錬が必要であるように、それを受け取る側にも鍛錬が必要ですね。