WILD SIDE CLUB - 映画について -

新作・旧作を問わず映画について書いています。長い映画大好き。まれにアートや演劇についても。

『ミスター・ダイナマイト :ファンクの帝王ジェームス・ブラウン』

渋谷のUPLINKでジェームス・ブラウンのドキュメンタリー『ミスター・ダイナマイト』を観て来ました。

 

映画『ミスター・ダイナマイト:ファンクの帝王ジェームス・ブラウン』公式サイト

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監督:アレックス・ギブニー
製作:ミック・ジャガー
キャスト:
    •    ジェームズ・ブラウン
    •    ミック・ジャガー
    •    アル・シャープトン
    •    メイシオ・パーカー
    •    メルビン・パーカー
原題:Mr. Dynamite: The Rise of James Brown(2014/アメリカ)

 

UPLINKは小さな映画館ですが、興味深い映画が多いので会員になっています。

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年会費1,300円で、通常上映の映画なら一回1,000円で観ることができちゃいます。さらに、一度の観覧につきカードにスタンプが1個押され、5個たまると1回無料になります。

上映スケジュールを見て、観たい作品がニ本あったら会員になることをお勧めします。

と、UPLINKのことはこのくらいにしておいて。

 

 ジェームス・ブラウンの光の部分

 

この映画の公式サイトを見ると、「JBの波乱に満ちた人生と絶頂期のライブ映像、そして、彼の魂を受け継いだアーティスト・関係者たちのインタビューで綴るソウルフル・ドキュメンタリー」とあります。

観終わってみればこの作品は、この宣伝文句から受ける印象とは少し違って、JBの、主に光の部分に焦点をあてた映画でした。JBが成功してからその活動に翳りが見える前までの期間について、ライブ映像と関係者たちのインタビューで構成されています。

”波乱に満ちた人生”については、生い立ちはこうで少年時代はこうだった、と説明があるだけで、その中身については詳しくは語られません。

16歳の時の逮捕と、バンドメンバーに給料を払わないどころかいろいろとルールを決めて罰金までとる、というようなこと以外は、あまりネガティブな部分は描かれておらず、おそらくそれは意図的にそうされているのだと思います。原題が"The Rise of James Brown"だというのをみても想像がつくことではありますね。

 

ダンサー必見。笑ってしまうほどファンキー

 

映画館に置いてあったフライヤーをもらって来たのですが、そこにはJB好きのミュージシャンや評論家、作家などのコメントがたくさん載っています(あとで公式サイトを見ましたが、そこにもありました)。そのなかでイラストレーターの安齋肇さんが、

JBを鑑賞できるシアワセを、神様に感謝します。

すべてのキャパシティーを超えて、笑いが止まらないのだ。

ただ、笑いすぎると天国から撃たれそうだから、注意注意。

と書かれていて、あー笑っちゃうのは私だけじゃなかった(笑)!と…

 

なぜかわからないのですが、笑ってしまうんですよ、JBのライブ映像を見ていると。

なにが笑いを引き出すのか、説明できません。たぶん、ファンキー過ぎるんですね。

有名な股割りとか片足でくくくくっと動いていくのとか、マイクアクションとかケープショーとか、そういう部分よりもむしろ普通に身体を動かしているときの、その動きがとにかくファンキーです。ジャンルを問わずダンスをやっている人は一度は見た方がいいでしょう。踊るということについて深く考えるきっかけになると思います。

 

JBと公民権運動

 

そもそもJBの人となりや人生についてあまり知らない私ではありますが、この映画で初めて知ったのは、JBが公民権運動と関わりがあったと言う点です。とは言っても、ここでもさほど詳しく述べられてはいないので、どのくらい深く関わったのかまではわかりませんでした。

当時JBに限らず、アフリカ系アメリカ人で有名な人物であればみな、多かれ少なかれ関わりはあっただろうと想像します。

(しかし、当時から現在まででどれほどのことが変ったでしょうか。いろいろ変った部分もあるのでしょうが、本質的な部分についてはどうなのでしょうね…と考えてしまいます)

 

ファンクはどのようにして生まれたか

 

ところでファンクはどのようにして生まれたか、については…この映画を観てもよくわかりません。それについてのJBの証言がないからです(あったとしても…具体的にはわからなかっただろうと思いますが)。結局のところ新しい音楽というのは、ある優れたミュージシャンのふとした思いつきから生まれるものなのかもしれません。

「JBはなにもわかってない」というような話が出て来ますが、その「なにもわかってない人」からすごいものが生まれちゃったんですね。既存のジャズ、ゴスペル、R&BなどがJBの中で混ざり合い、どういうわけかわからないけれども、その延長線上に違う世界を描き出したのでしょう。

JBがいなければ、誰か他の人がファンクを作り出したでしょうか。

作り出したかもしれないし、出さなかったかもしれない。それはわかりませんが、とにかく私たちはJBを聴き、これこそファンクだ!と思うのです。そしてJBがいなければ、私たちが現在聴いているミュージシャンたちのうちの何人かは、聴くことができなかったかもしれません。影響を受けているミュージシャンはひとりやふたりではないでしょう。

音楽については、当時JBと一緒に仕事をしたミュージシャンたちがいろいろと興味深い証言をしてくれています。個人的にはそのあたりがすごくおもしろく、もっといろいろと聞きたい部分でした。

 

フィクションとドキュメンタリー

 

昨年、同じくミック・ジャガーがプロデュースしたJBの伝記映画が公開されました(それも観に行き、以前別のブログにちょっと書いたのですが、あとでこちらに転記するつもりです)。

 

jamesbrown-movie.jp

 

実を言うと、今回このドキュメンタリーを観ながらついフィクションの方を思い浮かべたりしていました。それで自分の中で意味を補完した部分もあります。だから、もしフィクションの方を観ていなかったら、ドキュメンタリーを観て感じたことも少し違っていたかもしれません。

フィクションの方では影の部分も描かれています。あくまでもフィクションなので全部をその通りに受け取ることはできませんが、こちらも合わせてご覧になることをお勧めします。

 

 できれば大画面で観ていただきたいところですが、DVDも出ています。

 

"Try Me"が沁みますよ…